第12回目の今回は、ハードウェアの基礎知識の第2回として「電子シャッター」について説明します。

iPhoneで動きの早いものを撮影すると歪んで映ってしまうことがあります。ここでは、その画像が歪んでしまう原因の「電子シャッター」について解説します。電子シャッターは、グローバルシャッター、ローリングシャッターの2つに大別できます。以下、それぞれの動作原理を見ていきます。

グローバルシャッターとは?

画像というのは、図1で示すような画素の集合体です。横に並んだ画素の各ラインをLine 1、Line 2、…、Line Nとすると、グローバルシャッターの露光の原理は図2の通りとなります。グローバルシャッターとは、全てのライン(全ての画素)が同一のタイミングで露光を開始することを可能にした電子シャッター方式のことです。

図1 画像の拡大図

図1 画像の拡大図

CCD撮像素子では、このグローバルシャッターが一般的でした。また、一部のCMOS撮像素子でもこのグローバルシャッターを採用したものがあります。高速に動く物体を歪み無く撮影したい場合は、グローバルシャッターの撮像素子を選ぶのが良いと言えます。

図2 グローバルシャッターの動作原理

図2 グローバルシャッターの動作原理

ローリングシャッターとは?

多くのCMOS撮像素子は、ローリングシャッター方式を採用しています。ローリングシャッターのカメラで、高速で回転している飛行機のプロペラを撮影すると、動画1のような奇妙な映像が撮影されてしまいます。グローバルシャッターでは、このような現象は見られません。これは、撮像素子の動作原理に起因しています。


動画1 ローリングシャッターのカメラで撮影した動画

ローリングシャッターの動作原理は図3の通りです。トリガーの入ったタイミングで、Line 1から順番に露光を開始していきます。画像の各ラインで撮像タイミングが異なるため、動画1のように歪んだ画像になってしまうのです。

図3 ローリングシャッターの動作原理]

図3 ローリングシャッターの動作原理

電子シャッター以外のシャッター

前述の電子シャッター以外には、フォーカルプレーンシャッター、レンズシャッターがあります。
フォーカルプレーンシャッターは、撮像素子やフィルムなどの手前にあるシャッター幕を開閉させることで露光するメカニカルシャッターです。一眼レフで採用されるシャッター方式で、高速にシャッターをきることが可能です。

レンズシャッターは、レンズの前、後、中間のいずれかにシャッターを組み込む方式です。小型化が出来て音が静かというのが特徴ですが、フォーカルプレーンシャッターに比べて高速なシャッタースピードが使えないのがデメリットです。また、レンズにシャッターを内蔵するため、レンズを交換するタイプのカメラには不向きといえます。

ローリングシャッターは3次元計測の精度などに影響します。カメラを選ぶときはコストだけでなく、用途に合ったシャッター方式を選択すると良いでしょう。

次回は、光学的な視点から、集光をする「レンズ」について解説します!